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出版案内 『ピアジェに学ぶ認知発達の科学』(北大路書房 2007)を出版しました。
『ピアジェに学ぶ認知発達の科学』(北大路書房 2007)を出版しました。この本はPiaget’s Theoryという論文の翻訳とその解説に,小論「認知発達の科学のために」を添えたものです。翻訳論文の出典はP.H.Mussen, ed. 1970. Carmicael’s Manual of Child Psychology, Vol.1 New York: John Wiley & Sons. の第9章 Piaget’s Theory です。![]() その第一の理由は、Piaget’s Theoryがピアジェ自身によるピアジェ理論の最もまとまった論文となっていることです。 ピアジェ(1896‐1980)は約60冊におよぶ著作と数百本におよぶ論文をものにした,20世紀最大の認知発達心理学者である ことはよく知られていますが、著作の多くはその時々にピアジェが研究し終わったばかりのテーマについての モノグラフが中心で,ピアジェが自分の理論の全体像をまとまった形で提示するということをほとんどしていません。 そのため、Piaget’s Theoryはピアジェ自身がピアジェ理論の全体を要約した貴重な文献となっていることです。 その第二の理由は、日本の読者にピアジェ理論をできる限り正確に伝えることを意図しているからです。 よく知られているように、難解なフランス語で書かれたピアジェ理論を正確に理解することは,非常に困難です。 そのため, 日本の多くの認知発達研究者は英米の心理学者に理解された英米版「ピアジェ理論」を通して ピアジェを知ることになります。しかも, 日本の認知発達研究者は大学において認知発達を教える立場にあるので、 認知発達を学ぼうとする学生も、ピアジェ版「ピアジェ理論」に触れることなく、英米版「ピアジェ理論」 を学び、次の世代にそれを伝えて行くことになってしまいます。この連鎖を何とか断ち切り、 少なくとも日本においては英米心理学を経由してピアジェ理論を知るのではなく,ピアジェ版 「ピアジェ理論」を知っていただきたいのです。 読んでいただきたい第三の理由は,認知発達を学ぼうとする日本の学生でも理解できることを目標に 訳出するように努めたからです。ピアジェの著作はその訳書がたくさん出ているものの、難解なうえに 訳文上の問題もあって、予備知識のない者は大抵投げ出してしまいます。そこで、学生でも途中で 投げ出さずに読み通せるような本として、言い換えれば、ピアジェ理論の教科書として使える本と して出版しました。学生でも読めるように,ピアジェ理論の鍵概念となるタームや本文で出てくる 重要語彙にはできる限り解説や訳注をつけし、本文に直接述べられていないことでも,ピアジェ 理解に不可欠と思われる考え方には解説に加えました。 読んでいただきたい第四の理由は、認知発達研究を志す人に対してピアジェ理論を学ぶことの 今日的意義を説いた小論を添えたことです。教科書として使えるピアジェ理論の本といっても、 それを学びたいと思う動機づけがなければ、読み通すことができません。この小論では、 英米版「ピアジェ理論」を知る前に,なぜピアジェ版ピアジェ理論を知る必要があるのか、 ピアジェ理論はいくつかの現象を説明するだけのミニ理論ではなく,認知発達全般に関する パラダイムであることを強調しました。この小論を通して、ピアジェ理論を学ぶ今日的意義を 理解していただき、ピアジェ理論は難解で、その理解のためのハードルが高くても、認知発達 研究のための不可欠な素養であることを知っていただければ幸いです。 |
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