講義・演習:学部(2009年度)
※以下の内容はシラバスによるものです。
発達心理学概論
子どもの精神発達はすでに諸君自身がかって子どもであったため、自らの過去の経験を想起すれば理解できると思い込みがちである。しかし、現在の諸君の精神構造は子どもの時のそれと違っており、
自らの過去そのものが再構造化されているため、内観によって子どもの精神発達を理解することは不可能である。
科学としての発達心理学が要請されるのはそのためである。
ところで、精神発達は何に注目するかに応じて様々な捉え方が可能である。本講義では,基本的には20世紀最大の
発達心理学者ジャン・ピアジェの発達理論によりながらも,最新の研究成果をできるだけ取り入れて,乳児期から
幼児期・児童期を経て,青年期に至るまでの認知発達を概説する。大半の受講者は初めて発達心理学を学ぶ者で
あろうから,講義内容の系統性,厳密性より精神発達の不思議さ,興味深さを感得することができるようなテーマを
中心に解説したい。
また,自らの発達過程を振り返ることを通して,生涯発達への展望をもっていただくために,教育心理学専修の
受講者には,夏休みレポート(テーマ『自分史を語る』)の提出を求める。全員のレポートをまとめて小冊子として製本配付する予定である。
発達心理学特論II (2008年度講義要綱より)
本講義では,児童期および青年期における推理と判断について,その特徴および発達過程を概説する。
推理と判断は人間の行動において遍在的であり,乳児の行動にも「行為の水準」において,幼児の思考にも
「表象の水準」で特有の推理と判断が認められるものの、演繹的意味での論理的推論、確率的判断が
獲得されるのは児童期に入ってからである。推理と判断は日常的に常用されながらも,通常は無意識的に
処理されているので,その活動を内観によって捉えることは極めて困難である。そこで,推理と判断の中
でも心理学的に比較的よく実証的研究が行われている推論形式を中心に,その発達過程を紹介すると
ともに,こうした研究が含意する理論的・実践的意義が理解できるように解説したい。
教育心理学演習I, IIA
この演習は,将来発達心理学研究者あるいは幼稚園,小中学校教員など発達心理学を必要とする職を目指す人向けの演習である。
発達心理学に関する学術論文は日々蓄積されているが,学部学生の演習としては,研究の目新しさにとらわれることなく,学問的に基本的な事柄を扱っていて,後の研究者に大きな影響をあたえた基本文献に直接当って,幼児・児童・青年の精神の不思議な世界に触れ,それを探求することの面白さを知ることが肝要であろう。そのような観点から,20世紀発達心理学の巨匠ジャン・ピアジェの著作,特に,下記の初期5部作をメインテキストとする。その中から受講者の興味・関心にあったいくつかの章を取り上げ,テキストを講読しながらその内容についてディスカッションを行なう。なお,テキストの原書はフランス語であるが,講読は英訳本を使用する。
1 子どもの言語と思考(英訳:The Language and Thought of the Child)
2 子どもの判断と推理(英訳:Judgment and reasoning in the child)
3 子どもの世界観(英訳:The child’s conception of the world)
4 子どもの因果関係の認識(英訳:The child’s conception of physical causality)
5 子どもの道徳判断の発達(英訳:The moral judgment of the child)
なお,講読はあらかじめ担当者を決めることをしない。その場で適当に指名する。また,受講者全員が毎回一度は指名されるようにする。したがって,毎回事前にテキストを予習していることが,授業参加の条件となる。
早稲田大学教育学部
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